先日、第3回「不適切な行動への対応」を担当する浅野さんと打ち合わせを行いました。講演タイトルを見てちょっと引っかかった方もおられると思うのですが、「不適切な行動とは??」という話になりました。 当初、文献から問題行動の定義などを引っ張ってきていたのですが、二人でどうも違うなという話をしていました。せっかく現場スタッフである私たちが講師をさせて頂くのだから、「現場のスタッフが考える『不適切な行動』とは何か」をきちんと考える必要があるのでは、と話し合いました。 なにわの里の入所施設「ライフサポートなにわ」において、睡眠が不安定な利用者さんがおられました。「夜間安定して眠れないこのケースは、『不適切な行動』だろうか?」と話し合いが始まりました。「まず本人さんの健康面を考えると、『不適切な行動』と捉えてアプローチする必要があるんだろうね」と小池が差しさわりのないことを言うと、浅野さんがこう答えました。 「Aさんのご両親はご高齢で、Aさんが帰宅された際の対応に苦慮されています。Aさんは施設だけでなく自宅においても睡眠時間が短くなっており、このままこの行動が変わらないと、帰宅自体が難しくなる、という状況でした。帰宅がなくなる、“生活の幅が狭まる”という観点から考えて、『不適切な行動』と捉えることができると思います」 “生活の幅が狭まる” “本人の健康・安全が脅かされる” “他者への影響が大きい” などいろいろな観点があるかと思います。現場においては関係するスタッフ間で悩み、話し合い、ご本人・ご家族の意思を確認しながら支援計画を進めていきます。浅野さんと話ながら、大学時代の恩師から「大学で社会福祉を学ぶことの意義は、細かなスキルを学ぶということではなく、ご本人の生活・幸せを長期的な視点で考えることのできる素地を作ることだ」と教えて頂いたことを思い出しました。 連続基礎講座の講師スタッフたちは、現場において日々悩み、議論し、解のない問いに対して懸命に取り組んでいます。その取り組みについて少しでも講座でお伝えできれば、と思っております。(小池)
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【子育て支援講座ご報告、続き】
前回に引き続き、角田さんの子育て支援講座のご報告です。 角田さんがご家族のお話をされる上で、ご家族と3つ約束されていることがあるそうです。 ・ できるようになったことを伝える ・ 悪口を言わない ・ あなた(角田さん)の話したことは、あなたの物語である これを聞いて先日妻に言われたことを思い出しました。小池は数年前に少し体調を崩してしまったことがあり、そのころ子育てにほとんど協力ができませんでした。妻には本当にしんどい思いをさせてしまったと今でも申し訳なく思うのですが、その負い目があるせいか、子育てについて誰かに聞かれると「これこれこういうことがあって、あまり子育てに参加してこなかった」ということを話してしまっていました。 先日も同じようなことがあり、その数日後、妻から「その話はあまりしないでほしい」と言われました。「それを聞くと、思い出してしまうのかしんどくなる」「今はやってくれていることもあるんやから、そのことを話して欲しい」と言っていました。妻からすれば、確かにそうやろなぁと反省しました。 角田さんは3人の子育てをしていく中で大変な思いもたくさんされたはずです。でも、そのことを苦労話のようには話されません。角田さんご家族が笑っておられる(苦笑い含む)映像が浮かぶ感じで話をしてくださいます。そして、それを聞いている私たちは心のエネルギーを補充してもらったような気持ちになります。 3つの約束はご家族にとって大切なものであると同時に、私たちが元気になれる源であるようにも感じました(本文と写真はあまり関係ありません、帽子でバッタをつかまえようとする町娘2人であります)。(小池)
【子育て支援講座 ご報告】
9月13日(金)柏原市立市民プラザで『子育て支援講座』を開催しました! 講師の角田さんは3人のお子さんを育ててきて、末っ子のKさんが自閉症のある方でした。今回のテーマは「きょうだい」だったのですが、角田さん、Kさん、ごきょうだい、一家のさまざまなお話をしてくださいました。 その中で印象に残ったお話が「一方的な関係になり過ぎないこと」という言葉でした。これは別に支援者と利用者さんのあいだの話だけではないのですが、我々支援者は利用者さんのことを一方的に決めつけがちだと思います。 「絶対あれが原因やわ」と理由を決めつけたり、「こうした方がいいって」とやり方を押し付けてしまったり。自分自身も現場でそういったことをしていたなぁ、と角田さんのお話を聞きながら感じました。 先日、ある利用者さんと話をしました。「気持ちの抑えが効かない」「誰か話をじっくり聞いてくれる人がいたら、気持ちも落ち着くんやけど」とその利用者さんは話していました。 「そうやなぁ」「小池さんも家に帰ったら、奥さんにその日あったしんどかったことを聞いてもらっているわ」とぼそっと答えると、その利用者さんは「そうやんなぁ」と笑っていました。 支援者と利用者さん、あるいは上司と部下、親と子、という『力の強い人と弱い人』という関係の中では、『力の強い人』はどこかで「自分の方が相手を様々な面で上回っていないといけない」と考えがちだと思います。 でも、そういう関係性だけだと、『力の弱い人』の方はなかなか自分の思いを吐き出せないのではないか、と感じます。「まあ自分もこんなダメなところがあるんやけどね」くらいの関係もあった方が、困っていることを伝え合えたり、お互いを認め合えたりするのではないかと感じます。 言葉を話すことのできない利用者さんとやりとりするとき、どうしても理由を推測して、対応をこちらで考えて、ということをせざるを得ないときもあると思います。 でも、そんなときでも「自分が上回っていないと」という一方的な関係性だけで考えないように、「自分もそういうときあるよな」とか「それって大変やろなぁ」と考えながら関わっていけるようにしていけたら、と思います。(小池)
≪学校の先生向けきっず見学会≫
8月5日(月)、学校の先生を対象に、きっずの見学会を行いました。 今年度で4回目となるこの会は、きっずでの取り組みを先生方に知ってもらったり、先生方との交流を図ったりする機会として行っているものです。今年度は、保育所の先生1名、小・中学校の先生12名、支援学校の先生5名、計18名の先生方にご参加いただきました。 見学会では、療育の流れや取り組み内容についての説明を動画や写真を使って行ったり、教材や支援ツールの紹介を行ったりしました。支援ツールは、既成のものだけでなく、スタッフが独自で作成したプリント教材なども紹介させていただきました。 先生方からいただいた感想には、 「一つ一つの活動が明確だと思った」 「今日教わった内容をクラスでも生かしていきたい」 といったものがありました。 来てくださった先生方の中には、教材等を見ながらスタッフに使い方などを質問してくださる方、ツールの写真を撮影される方がたくさんおられました。先生方の熱心な姿勢に、スタッフも刺激を受けました。 今回のような機会をきっかけに、今後も先生方との相互理解・連携を深めて行きたいと思います。最後になりましたが、お越しいただいた先生方、お忙しい中ありがとうございました。(友渕)
≪お母さんによる進学に向けての座談会≫
先日、今年で3回目となる、『お母さんによる進学に向けての座談会』を開催しました! “お母さんによる”というところがポイントのこの企画。 今回も、高校生のお子さんをお持ちの、4人のお母さん達にご協力いただき、無事に開催の運びとなりました。 どんなふうに話を始めるのか、どういうふうに進めていくのか、全てお母さん方にお任せ! 「高校はどうやって決めたのですか?」 「高校は楽しく行っているのですか?」 「いつから受験勉強を始めましたか?」 「塾には通っていましたか?」 などなど。たくさんの質問が飛び出す中、ご協力いただいたお母さん達が丁寧に答えてくださり、お母さんどうしの会話が途切れることなく展開していました。 終始、和気あいあいとした雰囲気で、進学への不安が少しでも解消できたとの声をいただきました!! ご協力いただいた保護者のみなさま、ご参加いただいた保護者のみなさま、本当にありがとうございました!!(林(富))
≪自分でおしりを拭けるように…≫
今回は、トイレに行かずに、おしりの拭き方を教える方法をご紹介したいと思います。 お子さんの年齢が高くなると、異性のスタッフがトイレでおしりの拭き方を教えることが難しくなります。服を着たまま練習する方法があればと思い、支援を始めてみました。 【準備物】 ・ラミネートシート(熱を通したもの) ・ホワイトボードマーカー ・テープ ・アルコールシート ① ラミネートシートにホワイトボードマーカーで汚れを描く。 ② ①をズボンの上からテープで貼る(汚れの位置に注意する)。 ③ 体を「く」の字にして、アルコールシートで汚れを拭く。 ④ スタッフが確認をして、汚れが消えていたら終了する。 【ポイント】 ・汚れの位置を教えたり、「く」の字の姿勢を保てるような声かけをします。 ・取り組み直後に、本人と拭いたシートを見ながら褒めます。 支援を始めてから、ご家庭でも少しずつ変化がみられているようです。自分でおしりを拭けるようになるまで、続けていきたいと思います。 (山本)
【還暦のお祝い!】
先日通所支援係の会議で、なにわの里開所以来30年お勤めの大先輩スタッフの還暦祝いをしました! 開所以来のスタッフはその方ともう御一方おられるのですが、30年利用者さんを支えてきたというのは本当にすごいと感じます。私も入職して以来14年間いろいろなことを教えて頂きました。 なにわの里はフォーマルにも永年勤続の表彰をしているのですが、今回は係のスタッフが「還暦を祝おう!」と声をあげてくれました。なにわの里の娘・息子たちからのプレゼントでした。(小池)
≪スタッフ 内部研修≫
今年で3年目となりました、ABA(応用行動分析)実践研修。外部講師の方に来て頂き、現場のケースを取り上げてABAの視点から支援を進める、という実践形式の研修となっています。 先日発行いたしました「支援実践事例集2018-2019」でも、この研修で扱ったケースを掲載しています。執筆したスタッフが話していた中で印象に残っているのが、「現場の中でも、『この行動の持つ機能は何だろう?』と考えるようになった」という言葉です。 現場においては、激しい行動に対してパッと反応しないといけないことがあります。それはそうなのですが、「その行動の持つ機能」を考えることがとても大切だと感じます。 例えば、AさんがBさんを押そうとしていたとして、すぐに止めなければなりません。ただ、その後で「Aさんは何を目的にBさんを押そうとしたのか」を考える必要があります。Bさんの声が大きくてあっちに行ってほしかったのか、いつも自分がいるところにBさんがいてどいてほしかったのか、それを考えることで、「その場しのぎでない対応」を検討することができます。 日々忙しい現場においては大変なことではありますが、実践研修で学んだ知識を活かして、地道な支援を進めていこうと 思います。(小池)
スタッフインタビュー 第5弾 浅野さん
- 福祉の仕事に就こうと思ったのは? 大学が福祉系の学部だったのですが、もともと子どもが好きだったんです。子どもと関われる仕事をしたいなと思っていました。 - そんな浅野さんが障害分野にいこうと思ったのはなぜだったんですか? ボランティアサークルに入って、いろいろな現場を体験させてもらいました。その中でも、障害のある子どもと関わるのが楽しかったんです。その経験もあって、障害分野の仕事に就きたいと思うようになりました。 - その中でなにわの里に就職したのは? 実習やボランティアで自閉症の方と接する機会があり、その支援についても関心がありました。なにわの里に見学に来て、とてもしっかりした支援をしていると感じて、ここで働いてみたいなと思うようになりました。 - 仕事をしていて「しんどいな…」と思うのはどんなときですか? 解決しなければならない問題に対して、どう対処していいか分からないときがしんどいですね。ある利用者さんの状態が悪い、何かアプローチをしないといけないのにそのアイデアが出ない、そんなときですね。 - では、この仕事のやりがいは何ですか? さっきのしんどいことの続きみたいになるのですが、支援の結果、問題が解決したときに「やっていてよかったな」と感じますね。 - 7年の中で一番思い出深い支援は? ある利用者さんの帰宅時の支援をしたのですが、結果としてはうまくいかなかったんです。結果もそうなのですが、自分自身「途中で止まってしまった」という思いがあります。支援を続ければ、もしかするとうまくいったのではないか、自分の姿勢が甘かったと感じました。そういったことを繰り返さないように、「支援し続ける」ということを大切にしたいと思います。 以上、浅野さんのインタビューでした。入職一年目から今まで、支援に対する真摯な姿勢は全く変わりません。「優しさ」と「真面目さ」、それが浅野さんの持ち味だと小池は思います。
≪子どもも大人も楽しめる!テーブルゲームをご紹介 第2弾!≫
2月にご紹介したテーブルゲーム『クラウン』に続き、今回は『もじピッタン』というゲームをご紹介させて頂きます。 プレーヤーにはまず5枚の文字カードが配られます。自分の手持ちの文字カードを既にボードに置かれた文字カードにくっつけて、何かのことばを作ります。他のプレーヤーと順番でことばを作っていき、全てのカードがいち早く無くなった人が勝ちです。 つまり、1度に多くの文字カードを使えば使うほど、他のプレーヤーよりも早くカードが無くなるのですが、これが意外と難しく、そんなに簡単に4文字や5文字のことばを作れません! きっずサポートなにわでは、楽しみながら言葉を覚えたり、音韻認識(ことばがいくつの音のかたまりできているのかを理解し、どの音がどの順にくるのかが分かること)の学習などをねらいにスタッフとの遊びの時間に、このゲームを取り入れています。やってみると結構、大人の方でも真剣になってしまうかも…。機会があれば、是非一度、お試しください!(高木)
実践事例集、発行!
前号の発行からかなり期間が空いてしまったのですが、ようやく「なにわの里実践事例集2018-2019」を発行することができました!! きっずサポートにおけるお子さんへの学習支援、ライフサポートでの誤嚥予防の取り組み、施設入所申込者の推移とその考察、などさまざまなテーマを扱っています。 すべてがうまくいった支援ばかりではありません。うまくいかなかった支援もあります。なぜうまくいかなかったかを考察し、文章として残すことで、なにわの里の支援がひとつ積み上げられるのではないかと思っています。 6月上旬になにわたいむず春号(もう夏の気候ですが…)と一緒に発送する予定です!この記事を読んで一度読んでみたいと思った方は、下記連絡先までご連絡頂ければと思います!(小池) なにわの里 法人本部事務局 mail koike.s@staging-samba.com 電話 072-976-0720 FAX 072-976-0721
スタッフインタビュー第4弾 久保さん
こんにちは、なにわの里の小池です。今回は、スタッフインタビュー第4弾をお送りします! 氏名:久保 理緒奈 所属:入所・グループホーム支援1係(1年目) ― 福祉の仕事をしようと思ったきっかけは? 学生時代、心理系の学部に通っていたのですが、ゼミの先生が発達心理学を専門とされていたんです。3回生のときに発達障害のあるお子さんと関わるボランティアを始めたのが、福祉の仕事をしようと思ったきっかけになります。 集団に馴染むことができずしんどい思いをしていた子どもが、「うまくできたね!」と誉められることで成長していく姿を見て、こんな仕事をしたいなと思いました。 ― なにわの里に入職しようと思ったのはなぜ? 見学のときに、どのスタッフさんも「こんにちは」と自然にあいさつをしてくれたことです。こんな雰囲気のところで働きたいなと感じた、というのが理由です。 ― 勤務を始めてから、特に印象に残っていることは何ですか? なにわの里に来るまでは、言葉でのコミュニケーションが難しい方とやりとりしたことはほとんどなかったんです。言い方が失礼にあたるかもしれないのですが、実際に接する中で「こんなにやれることが多いんだな」と感じることが多かったです。 ある利用者さんが「エイエイオー!」のジェスチャーで何かを訴えておられたのですが、私は何を訴えたいのか分からなかったんですね。「何ですか?」と何度か聞くと、チラシを持ってきてソファの写真を指差していたんです。「エイエイオー!」がソファとは分からなかったのですが、いろいろな方法で表現されるのだなと感じました。 ― 働き始めて大変だなと思ったことは? 印象に残っていることとも重なるのですが、「利用者さんの伝えたいことが分からない」ということが大変だな、と感じました。 入って1ヵ月目でまだ先輩スタッフに付いているときだったのですが、ある利用者さんが何かをジェスチャーで訴えていたんです。でも、私は分からなくて。すると、すっと先輩スタッフの方に行ってしまわれた、ということがあったんです。もっと利用者さんのことを知らないと、勉強しないと、と思いました。